1998 年 72 巻 9 号 p. 870-875
近年, P.carinii肺炎の早期診断法としてPCR法を用いたP.cariniiの検出が行われるようになってきた.今回の我々の検討においても各種気道由来の検体よりP.cariniiを検出することが可能であった.しかし, 上気道由来である咽頭ぬぐい液や喀痰からP.cariniiを検出した症例においてP.carinii肺炎を発症した症例はなく, 本症の確定診断が得られた症例はすべて下気道からの検体である気管支洗浄液やBALFであった.つまり, 下気道における菌の存在はP.carinii肺炎発症に大きく影響するが, 上気道においては, P.cariniiが気道へ定着したいわゆるcolonizationの状態が存在する可能性が示唆された.これは, 従来より言われていた幼少時に不顕性感染して肺内に存在し, 免疫不全状態から発症する様式とは異なる感染経路として, 外因性感染の可能性も含めて検討れるべきものであり, そのひとつの手段としてPCR法は有用な検査法と思われた.また, PCR陽性となった症例はすべてST合剤が予防的に投与されていない症例であり, P.carinii肺炎に対するST合剤の予防投与が有用であることがPCR法によって証明されたと考える.