感染症学雑誌
Online ISSN : 1884-569X
Print ISSN : 0387-5911
ISSN-L : 0387-5911
胸部単純X線写真では所見なく, 胸部CTスキャンにて診断された小児肺結核症
片倉 茂樹今川 智之伊藤 秀一宮前 多佳子満田 年宏伊部 正明相原 雄幸横田 俊平
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 73 巻 2 号 p. 130-137

詳細
抄録

1996年3月から1998年3月までの2年間に, 排菌者との接触歴をもち, ツベルクリン反応陽性から結核菌感染が強く疑われたが, 血液検査, 喀痰や胃液検査, 抗酸菌培養, PCR法などでは発症を示唆する所見に乏しく, 胸部単純X線検査でも肺病変を確定できない小児の5症例を経験した.しかしこれらの症例は, 胸部CTスキャンにて肺内に結核腫または結核病変と思われる所見を検出することができ, 肺結核の診断の下に治療を開始することができた.この報告では, これらの症例を報告するとともに, 小児期の結核症の診断における胸部CTスキャンの有用性について考察した.全例とも家族内に結核発症者・排菌者がおり, ツ反陽性であった.初診時の血液検査では白血球数, 赤沈値, CRPなどの炎症所見に上昇を認めたのは1例のみであり, 他の4例は正常域にあった。一方共通して異常を呈した検査値は血清IgM値であり, 全例とも年齢相当値の2~3倍であった.
初診時の結核菌の検索では, 2例において喀痰ないし胃液のPCR法によりのみヒト型結核菌が同定されたが, 他の3例では検鏡, 培養, PCR法検査とも検出されなかった.胸部単純X線検査で異常陰影を認めた症例はなかったが, 胸部CTスキャンを施行した結果, 5症例ともに肺結核病巣と考えられる異常陰影を認め, INHおよびRFPの2剤併用療法を行い, 臨床症状と胸部CTスキャンを含む検査所見の改善をみた.家族内に排菌者が発見され, 自然陽転を含むツ反陽性小児例では, 血液検査, 喀痰 (胃液) 検査, 胸部単純X線検査に加えて, 積極的に胸部CTスキャンを実施し, 肺内結核病変の検出に努める必要があると考えられた.

著者関連情報
© 日本感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top