感染症学雑誌
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免疫ミルクを用いたウイルス感染防御効果の検討
吉田 仁森田 稔小林 憲忠竹内 修脇田 史朗蜂巣 達之原 真人鈴木 達夫
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1999 年 73 巻 2 号 p. 122-129

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抄録

我々は母乳中の抗体による生体防御システムに着目し, 免疫ミルクの受動免疫によるウイルス感染防御効果を検討した.
6種のエンテロウイルス, すなわちコクサッキーウイルスA9型 (CVA9), A16型 (CVA16), B3型 (CVB3), B5型 (CVB5), エコーウイルス11型 (E11) および18型 (E18) を免疫したヤギから乳を採取し, 脱脂後カゼインを除去した免疫ミルクを作製した.この免疫ミルク中には高いウイルス中和活性を持つ免療グロブリン (IgG) が認められた.免疫した6種のエンテロウイルスの中でマウスに心筋炎・心房心筋炎を発症させることが知られているコクサッキーウイルスB3型 (CVB3) を用いて, 免疫ミルクの腸管粘膜局所での感染防御効果についてin vitroおよびin vivoの検討を行った。
幼若マウスを用いたCVB3に対する感染防御実験では, 免疫ミルクを投与することによりマウスのウイルス性心筋炎の発症が抑制された.ウイルスの体内動態の解析では, 免疫ミルク投与マウスの各臓器中におけるウイルスゲノムの検出率が減少したことからウイルス感染防御における免疫ミルクの有用性が確認された.
さらに, 小腸腸管上皮細胞間リンパ球 (i-IEL) 中の細胞動態の解析では, 免疫ミルク投与マウスのCD4陽性T細胞の増加が認められた.増加したCD4陽性T細胞はウイルスに対する反応性が増強する傾向が認められた.このことから免疫ミルクは腸管粘膜の防御機能を高める可能性が示唆された.

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