感染症学雑誌
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どんな基礎疾患がサイトメガロウイルス感染を引き起こしやすいか? 初めての標準化された客観的サイトメガロウイルス用PCRキットを使用した, 良性疾患, 血液悪性腫瘍, 骨髄悪性腫瘍, 骨髄移植後, 腎移植後における比較
日吉 基文田川 進一橋本 卯巳巽 典之
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1999 年 73 巻 2 号 p. 144-148

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抄録

幼児, 老人, 癌患者, 免疫抑制剤を投与されている患者など, あらゆる種類の日和見感染宿主は活動性サイトメガロウイルス (CMV) 感染などCMV感染症に容易に罹患する傾向があると言われている.我々はこのことが真実であるかどうか疑問を持ち, 世界初の標準化されたCMV感染症診断用のPCRキットであるアンプリコアCMVテスト (Roche Diagnostics Systems, Branchburg, NJ) を使って対象人の血漿中のCMVウイルス血症を検出することにより, この事柄を調べた.CMVIgG抗体価4未満の健常人100人とCMVIgG抗体価4以上の健常人100人が調べられた.両方の健常人グループにはCMVウイルス血症陽性は見つけられなかった.またCMV感染が疑われる患者は4つのグループに分けて調べられた.(1) 104人の良性疾患の患者群は1人のCMVウイルス血症陽性を含んでいた.しかし他の患者はすべて陰性であった.(2) 骨髄移植を受けたことのない99人の血液悪性腫瘍はすべてCMVウイルス血症陰性だった.(3) 骨髄移植後の120人の患者群は28人のCMVウイルス血症陽性を含んでいた.(4) 腎移植後の37人の患者群は19人のCMVウイルス血症陽性を含んでいた.これら4つの疾患グループ問でCMVウイルス陽性率の統計学的有為差がノンパラメトリックテストの一つであるクルスカル・ワリステストによって見出された (p<0.0001).今日まで, CMV感染はあらゆるタイプの日和見患者に起こると言われてきた.しかしながら, 実はCMV感染は臓器移植後の状態に陥りやすい傾向があり, 移植を受けていない血液悪性腫瘍患者には起こりにくい傾向があるということを我々はこれらのデータにもとづき結論する.

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