感染症学雑誌
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当院におけるVibrio vulnificus感染4症例の臨床細菌学的検討
伊藤 功朗大澤 真有田 真知子橋本 徹石田 直本郷 俊治藤井 寛之
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1999 年 73 巻 2 号 p. 149-155

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抄録

V. vulnificus感染症は, 慢性肝疾患患者で重症化し, 致命率の高い感染症として近年注目されている.倉敷中央病院において1984年から1997年までの間, 4症例で臨床検体よりV. vulnificusを4菌株分離し, 同菌による感染症と診断した.4症例について臨床的検討を行い, 各菌株について薬剤感受性試験を行った.患者の年齢は49歳から61歳 (平均56歳) で, 全て男性であった.全員が基礎疾患に慢性肝疾患を持っていた.2名が発症前に生鮮魚介類を摂食していた.皮膚病変を2名で認め, 4名とも敗血症性ショック・DICを合併し, 静脈血培養よりV. vulnificusを検出した.3例を同菌による原発性敗血症, 1例を胆嚢炎と診断した.転帰は, 3名が死亡し, 1名のみ生存した.薬剤感受性試験ではMINO, 第三世代のセフェム系, カルバペネム系等の抗菌剤に良好な感受性を示した.V. oulnificusによる感染症は慢性肝疾患患者に発生すると予後不良であり, 生鮮魚介類の摂食を控えるように指導する必要がある.また, 本菌による感染症の特徴を臨床医が認識した上, 疑わしい症例では迅速かつ適切な対処を要する.

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