1999 年 73 巻 2 号 p. 179-186
長野県において1981年から1993年の13年間に43事例の腸炎ビブリオ食中毒が発生し21種類の血清型が確認された.このうち, 12事例 (7種類の血清型) 41菌株について7種類の疫学的マーカー (血清型, 薬剤感受性, ファージ感受性, プラスミドプロファイル, TDHの産生, tdhおよびtrh遺伝子, PFGEパターン) の有用性について検討した.薬剤感受性は4種類, ファージ感受性は3種類, プラスミド保有は5菌株, TDH産生およびtdh遺伝子保有は39菌株であったがtrh遺伝子は全菌株が保有していなかった.PFGE法はNot Iで消化後に電気泳動を行い, 11~21本の断片が得られ, そのPFGEパターンは12種類に分類された.
血清型およびPFGEパターン以外の疫学的マーカーは細分化されず, 疫学的マーカーとしての利用は低いと考えられた.PFGEパターンは同一血清型のうち, O3: K5の2事例では同一であったが, O4: K8の6事例間では4種類に分類され分離年代により相違が確認された.他の5事例ではそれぞれ異なったPFGEパターンであった.PFGEパターンは一部の食品由来菌株を除き, 同一事例間では同一のパターンであった。腸炎ビブリオの疫学的マーカーとしてのPFGEパターンの有用性が示唆され, 血清型との組み合わせが疫学解析に最適と思われる.