1999 年 73 巻 3 号 p. 218-224
平成9年7月, 血便と強い腹痛を呈した秋田県内在住の15歳女性と20歳男性の糞便から分離されたVTECO121: H19の疫学的性状とVirulence factorについて検討した.2株のVTEC O121: H19は検討した範囲で同一の生化学的性状, 薬剤感受性, プラスミドプロファイルを示したが.XbalおよびNotIPFGEパターンはわずかに異なっており, 非常に近縁な2株のVTEC O121: H19が秋田県内に侵淫して感染事例を惹起したことが示唆された.
一方, 2株のVTEC O121: H19はVTEC O157: H7と同様にeaeA遺伝子, およびCVD419プローブとハイブリダイズする約60MDaプラスミドを保有し, エンテロヘモリジンを産生した.また, in vitroにおけるVT-2産生能も検討した範囲でEHEC O157: H7と同程度であった.これらのことは, VTECO121: H19がVTEC O157: H7と検討した範囲では同等のVirulence factorを保有していることを示すものと考えられた.
VTEC O121: H19は成年に比較的重篤な症状を惹起したことが注目された.国内におけるVTEC O121: H19の分離実態は明らかではなく, 今後, O121群別用血清の市販が望まれる.