感染症学雑誌
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薬剤耐性HIV-1の検出および検出法の評価
森 治代小島 洋子川畑 拓也大竹 徹大石 功
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2000 年 74 巻 5 号 p. 450-457

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抄録

薬剤治療を受けている84名のHIV-1感染者について, 抗HIV薬に対する耐性検査を行ったところ, 43名 (51.2%) に何らかの逆転写酵素阻害剤に対する耐性獲得を示唆する遺伝子変異が検出された.また, プロテアーゼ阻害剤の投与を受けている感染者の80%以上において薬剤投与開始以前より1-3カ所の耐性に関与すると報告されている変異アミノ酸が検出されたが, その変異がプロテアーゼ阻害剤に対する耐性を誘導するという傾向は認められなかった. しかしながら, 治療開始後, 新たに3カ所以上のアミノ酸変異が蓄積された例では, 著しいHIV-1RNA量の増加が見られ, 薬剤耐性の獲得が示唆された. 遺伝子解析により推察される薬剤耐性 (genotype) と生物学的評価法による薬剤感受性 (phenotype) を比較したところ, 遺伝子レベルでは明らかな耐性変異が見られないにも関わらず薬剤感受性が低下している例が少ないながら認められた. このことから, 治療開始前やgenotype解析データと血中HIV-1 RNA量などの臨床データが一致しない場合にはphenotype耐性検査を行う必要があるものと考えられた.

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