感染症学雑誌
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Penicillin resistant Streptococcus pneumoniaeによる小児急性中耳炎症例の検討
第1報: 臨床疫学的検討
宇野 芳史
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2000 年 74 巻 5 号 p. 458-464

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抄録

耳漏および鼓膜切開液から, ペニシリンGのMICが2.0g/ml以上のペニシリン耐性肺炎球菌が検出された小児急性中耳炎症例について, 急性中耳炎が難治化する要因について, 患児の患者背景因子, 臨床的背景因子および細菌学的因子について検討を行った.
治療成績は, 通常の鼓膜切開術および抗菌薬の投与で治癒した症例を治療成功例群, 治癒せず, 鼓膜換気チューブを留置した症例あるいは留置するも耳漏が持続した症例を治療不成功例群とした.
今回検討した患者背景因子および臨床的背景因子は, 今回の急性中耳炎に罹患した年齢, 性別, 集団保育の有無, 中耳炎の既往の有無, 兄弟の有無, 今回の中耳炎までの抗菌薬の投与の有無, 今回の中耳炎に対する治療の有無, PCGのMIC, cefditoren (以下CDTR) のMIC, 血清型である.
検討項目の内, 両群で有意差を認めた項目は, 今回の急性中耳炎に罹患した年齢, 中耳炎の既往の有無, 抗菌薬投与の既往の有無, 今回の中耳炎に対する治療の有無, そのうちでも, 特に耳鼻咽喉科での治療の有無であった. 一方, 有意差を認めなかった項目は, 性別, 集団保育の有無, 兄弟の有無, PCGのMIC, CDTRのMIC, 血清型であった.
今後は, 小児急性中耳炎が難治化する要因として, 患児の患者背景因子, 臨床的背景因子および細菌学的因子以外に, 患児個人の細菌感染に対する免疫力を検討する必要があると考えられた.

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