感染症学雑誌
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聖路加国際病院における最近6年間のカンジダ血症についての検討
風間 逸郎古川 恵一
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2003 年 77 巻 3 号 p. 158-166

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抄録

聖路加国際病院において1993年11月から1999年10月までの6年間に血液培養でカンジダが検出された71例のうち調査可能であった59例について, 菌種, 感染源, 患者背景, 危険因子, 合併症, 治療法と予後などについて検討した. カンジダ血症の菌種は, Candida albicans (52%) が最も多く, 次いでCandida tropicalis (11%) が多くみられた. 感染源としては, 88%の症例は中心静脈カテーテル感染によるものと考えられた. 危険因子 としては, 中心静脈カテーテルの5日以上の長期留置, 基礎疾患として消化器癌, 消化器手術後, 広域または多剤抗菌薬の5日以上の使用, 副腎皮質ステロイド剤使用などであった. 合併症は約半数 (47%) にみられ, 眼内炎 (19例, 32%) が最も多く, 5日以上カンジダ血症によると考えられる発熱が続いた例では56%にみられた. また敗血症性ショックが (12例, 20%) にみられた. カンジダ血症に起因した死亡率は全体で46%であった. フルコナゾールのみで治療された34例では死亡率50%であった. アンホテリシンBで治療された20例では死亡率40%であり, アンホテリシンB治療群の方が死亡率はより低かった. しかし統計学的な有意差は認めなかった. カンジダ血症の早期発見のためには, 上述の危険因子のある患者において発熱がみられた場合, 血液培養, 眼底検査が必要と考えられた. カテーテル感染の疑わしい例では血管内カテーテルの早期抜去と培養検査が必要である. カンジダ血症が判明した場合, 眼底検査と共に全例治療を行う必要がある. 特に重症例やCandida albicans以外のカンジダ血症ではアンホテリシンBの投与がより確実な治療法であると考えられた.

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