感染症学雑誌
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クリプトコックス髄膜炎の臨床的検討
クリプトコックス抗原価の推移を中心として
岸 一馬本間 栄中谷 龍王中田 紘一郎
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2003 年 77 巻 3 号 p. 150-157

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抄録

1996年から2000年までに当科に入院したクリプトコックス髄膜炎3例について, 臨床像, 血清と髄液のクリプトコックス抗原価の推移, 薬剤感受性を検討した. ラテックス凝集反応を用いた抗原価は, パストレックスクリプトコックス (富士メビオ, 東京) とセロダイレクトクリプトコックス (栄研化学, 東京) の2つのキットで測定した. 3例の基礎疾患は, 1) 肝硬変, 2) 非ホジキンリンパ腫と粟粒結核, 3) 悪性胸腺腫とSLEであった. 髄液の墨汁染色は2例に陽性で, 3例ともCryptococcus neoformansが培養された. 血清の抗原価は髄液よりも高値を示し, セロダイレクトの抗原価の方がパストレックスよりも高値であった. 血清と髄液の抗原価 (セロダイレクトクリプトコックス) の最大値はいずれも1,024倍以上であった. 治療は, AMPH-B+5-FCの全身投与の他, 2例でFLCZ+AMPH-B髄注, FLCZ+5-FC+AMPH-B髄注を併用した. 治療後, 血清と髄液の抗原価は低下したが, 非ホジキンリンパ腫と粟粒結核を有する重症例では抗原価の低下が緩徐であった. 髄液の抗原価 (セロダイレクトクリプトコックス) が治療開始より8倍未満になるまでの期間は, 1.7から7.3カ月で, 血清の抗原価が8倍未満に低下した症例はなかった. 5種類の抗真菌剤に対する最小発育阻止濃度 (MIC) はAMPH-Bでは0.06~0.25μg/ml, 5-FCでは4~8μg/ml, FLCZでは2~8μg/ml, MCZでは0.125~0.5μg/ml, ITCZでは0.03~0.125μg/mlであった. 血清と髄液の経時的抗原価測定は, クリプトコックス髄膜炎の治療効果の判定に有用であった.

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