感染症学雑誌
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臨床材料から分離されたCefotaxime耐性Proteus mirabilisの耐性機構およびその患者背景に関する検討
堀口 祐司橋北 義一岡 陽子高橋 俊山崎 勉前崎 繁文石井 良和
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2004 年 78 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

1997年から2002年までの6年間に臨床材料から, 薬剤感受性試験によってampicillin, piperacillin, cefazolinおよびcefoperazoneに対して耐性と判定されたProfeus mirabilisが56株 (総分離株465株) 埼玉医科大学附属病院において分離された.分離数の推移を見てみると, 1997年に2株分離されたにすぎなかったampicillin, piperacillin, cefazolin, cefoperazoneに耐性を示すP. mirabilisが, 2002年には13株に増加していた.これら4剤に耐性を示すP. mirabilisのうち, 保存されていた12株を被検菌株として, 薬剤感受性試験, ESBL確認試験, PCR法によるESBL遺伝子検出を実施した.12株全株がpiperacillin (MIC;64μg/ml以上), cefotaxime (128μg/ml以上), cefpodoxime (64μg/ml以上), ceftriaxone (64μg/ml以上), cefepime (32μg/ml以上) に対して耐性を示したが, ceftazidimeに対しては全株感受性 (0.5以下~2μg/ml) であった.また, 12株中1株のP.mirabilisはcephamycin系抗菌薬であるcefoxitin, cefmetazole, cefotetanに耐性を示した.ESBL確認試験によってESBLの産生が確認された12菌株に対して, それらが属するグループを特定する目的でPCRを実施した. その結果, 8株からCTXM-10の属するグループの遺伝子が, 2株からToho-1の属するグループの遺伝子が検出された.なお, 残りの2株についてはその遺伝子型を特定することが出来なかった. 12株のESBL産出P.mirabilisが分離された症例のうちP.mirabilisが起炎菌と考えられる感染症を発症したのは4例で, 尿路感染症2例, 肺炎1例, 敗血症1例だった.感染症発症症例は, ceftazidimeが単独投与された症例も含めて治療に難渋した症例を認めず, 全例感染症の治癒および菌の消失が確認された. 本検討により当院において検出されたβ-lactam薬耐性のP.mirabilisの中に, CTX-M-型ESBLを産生する菌株の存在が明らかとなった.

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