感染症学雑誌
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わが国における過去10年間の劇症型A群溶血性レンサ球菌感染症患者由来Streptococcus pyogenesに関する疫学調査
奥野 ルミ遠藤 美代子下島 優香子柳川 義勢諸角 聖五十嵐 英夫大江 健二
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2004 年 78 巻 1 号 p. 10-17

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抄録

劇症型レンサ球菌感染症は, 重症かつ致死率の高い感染症である.本報告では, 1992年から2001年の10年間に劇症型レンサ球菌感染症または本症疑い250症例の患者情報について調査を行い, 患者から分離されたStreptococcus pyogenes 234株については, T型別および発熱性毒素の検査を実施し, 疫学的検討を行った
症例について調査した結果, 患者数は, 性別では男性が女性に比べ約14%多く, 年齢別では60代が23.8%と最も多くみられた. また, 致死率は全体で43.2%であったが, 性別では女性 (52.3%) の方が男性 (36.9%) より高かった.
T抗原型別の結果, T1型が最も多く, 次いでT3型であり, この2種の型で全体の54.3%を占めた. T1型は, spe (streptococcal pyrogenic exotoxin) A遺伝子保有が98.8%であったが, その内発熱性毒素A非産生株が53.9%であった. 一方, T3型は82.9%がspe A遺伝子保有し, そのすべてが発熱性毒素Aを産生していた.
今後は, T型別と発熱性毒素産生性の関連性と同時に菌側と宿主側の因子の関係についても併せて検討していく必要があると考える.

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© 日本感染症学会
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