感染症学雑誌
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水系汚染Legionella属菌に対する感染防止対策法の確立
セラミック触媒の殺菌作用に関する評価
笹原 武志菊野 理津子曽我 英久関口 朋子佐藤 義則高山 陽子高橋 晃青木 正人北里 英郎井上 松久
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2004 年 78 巻 1 号 p. 22-31

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抄録

水系汚染Legionella属菌に対するセラミック触媒の殺菌効果を各種温度 (25℃および42℃) 条件下にて検討した. PBSに浸漬したセラミック触媒はいずれの条件下においてもL. pneumophila ATCC標準株 (血清型IおよびII型) に対して顕著な殺菌効果を示し, その菌数を4時間処理で1.33 log10, 6時間処理で2.13 log10そして12時間処理で>5log10にまで減少させた. また, 温泉水から分離したL. pneumophila (血清型I~VI型), L. micdadeiおよびL. dumoffiiの6菌株に対しても同様の殺菌効果が認められた. セラミック触媒を浸漬させたPBSの上清にも殺菌効果が認められ, その成分として8種類 (Mg, Al, Ca, Mn, Zn, Sr, Ag, Ba) の各元素イオンが最大2.5mg/l検出された.検出された元素イオン濃度と同じに成るように様々な組み合わせでそれぞれの元素をPBSに添加した場合, Ag単独群或いは8種類全ての元素を組み合わせた群においてのみ有意な殺菌効果が認められ, その殺菌効果はAg単独群より8種類の元素を組み合わせた群においてより顕著であり, その菌数の減少は3.28log10に達した.以上の成績から, セラミック触媒はLegionella属菌に対して優れた殺菌効果を発揮し, その殺菌効果が少なくともAgイオンを含む8種類の元素イオンによる相乗的作用によってもたらされることが示唆された.さらに, そのセラミック触媒による殺菌効果はPBS以外の冷却塔水や温泉水においても同様に最長5週間にわたって確認され, このセラミック触媒が人工的環境水を汚染するLegionella属菌に対する極めて有効な感染防止対策法の一つになり得ることが明らかにされた.

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