感染症学雑誌
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特別養護老人ホームにおける環境由来と思われるエンテロトキシン産生Clostridium perfringensによる集団下痢症
深尾 敏夫佐藤 恵田中 保知門間 千枝加藤 直樹
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2004 年 78 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

平成13年8月, 岐阜市内の特別養護老人ホーム入居者1名が下痢症により近医へ受診したのを発端とし, 同ホームで同様の症状を示す入所者が6名あるとの通報が岐阜市保健所にあった. これらの患者7名の糞便検体を検査したところ, Clostridium perfringensが高菌数分離された.分離株は, PCRによりエンテロトキシン遺伝子が検出されたことから, 腸管毒素産生C.perfringensであることが判明した. また, 一部の検体において糞便中のC.perfringensエンテロトキシンの検出を逆受け身ラテックス凝集反応で調べたところ, 強陽性を示した.当初は食中毒を疑い, 食中毒菌を対象に同ホームの1週間分の保存食と厨房の拭き取り検体を培養したが, 全て菌陰性であったため, 施設内の居住環境の拭き取り検査を追加して実施した. その結果, 複数の検体から腸管毒素産生C.perfringensが分離された.患者および環境由来株の血清型は全てTW47であり, 3薬剤に対する薬剤感受性がほぼ均一で, ゲノムDNAのSmaI切断後のパルスフィールドゲル電気泳動におけるバンドパターンが同一であったことから, 単一クローンのC.perfringensが居住環境に広がり, 一部の入居者に感染したことが強く示唆された. なお, 下痢症患者の発生は3週間にわたり14名にみられ, うち11名で下痢の再発が認められたが, 施設の居住環境の清拭を実施したところ, 下痢患者の発生は速やかに終息した.

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