感染症学雑誌
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免疫不全患者の皮膚病巣から分離されたMycobacterium haemophilumの細菌学的特性
斎藤 肇戸田 憲一松本 いづみ松尾 清光中永 和枝石井 則久
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2004 年 78 巻 5 号 p. 389-397

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抄録

患者は53歳男性.左足背中央部に疼痛を伴い, 中央部が潰瘍化した紅色ドーム状隆起 (24×18mm) を生じ, 病理組織学的には潰瘍を取り囲んだ膿瘍と肉芽よりなり, 多数の抗酸菌が検出された. その後, 同側鼠蹊部のやや末梢側に鶉卵大, 紅色の硬結を生じた.rifampicin, levofloxacin, minocyclineの投与により病変は改善傾向を示した.患者は細胞性免疫能の低下があるが, HIV-1/HIV-2抗体は陰性で, その原因については明らかでない.
皮膚組織あるいは膿よりの抗酸菌の分離培養は37℃で2%小川培地では陰性であったが, BBL MGITでは4~12日後に陽性となった. このMGIT発育菌はMycoBrothおよび7H9ブロス, ヘミン (60μM) あるいはクエン酸鉄アンモニウム (15mg/ml) 加7H11寒天並びに血液寒天に30℃および37℃ (30℃>37℃) で, またクエン酸鉄アンモニウム加7H9ブロスおよび同2%小川培地では30℃でのみ発育したが, ヘミン加2%小川培地では両温度下で発育陰性であった. 7H11寒天平板では菌接種後, X-factor stripをマウントし, 30℃および37℃培養でその周辺に菌の発育がみられたが, 2%小川培地では両温度下で発育陰性であった.本菌は寒天をベースとした培地上ではR型, 卵をベースとした培地上ではS型集落の非光色性遅発育抗酸菌で, ナイアシン産生, 硝酸塩還元, ウレアーゼ, アリルスルファターゼ (3日法), Tween80水解, カタラーゼ, 68℃カタラーゼ, 酸性ホスファターゼおよびテルル酸塩還元陰性, 中性紅反応強陽性で, 16S rRNA遺伝子配列はMycobacterium haemophilumに一致した.これらの諸性状から, 分離抗酸菌はMycobacterium haemophilumと同定され, わが国における本菌感染症はEndoらの報告についで第2例目である.

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