感染症学雑誌
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乳児院におけるレジオネラ症の集団発生例
酒井 英明赤井畑 美津子新妻 一直細矢 光亮
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2004 年 78 巻 5 号 p. 404-410

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抄録

本邦で初めての, 乳幼児におけるレジオネラ症の集団発生例を経験した.
2002年6月中旬より福島県若松乳児院において, 咳嗽, 喘鳴などの呼吸器症状と発熱を呈する患児が続出した.レジオネラ症の集団発生を疑い, レジオネラ尿中抗原検査を施行したところ8名が陽性であった.
性別は男児5名, 女児3名で, 年齢は11カ月から1歳10カ月であった. 基礎疾患がある患児は1名であり, 入院加療を要した患児は6名であった.
鼻汁, 咳嗽, 発熱は全例に認められ, 喘鳴は8名中7名にみられた. 咳嗽期間は平均9.9日, 発熱期間は平均4.5日であった.
入院患児6名における検査成績では, 白血球数7, 500~15,300/μl, CRP0.2~2.5mg/dlであった.胸部エックス線写真所見では浸潤陰影 (右下肺野, 左下肺野) を2名に認めた.
治療に関しては, マクロライドまたはテトラサイクリン系抗菌薬を4名に, 他の4名にはβ-ラクタム系抗菌薬を使用した.
感染源の検査として, 浴室のシャワーヘッド, 浴槽, 給水末端, 洗濯場などの12カ所から検体採取を行ったが, レジオネラ菌は検出されなかった.推測の域ではあるが, 感染源としては加湿器, もしくは院内消毒で使用した噴霧器が強く疑われた.
自験例を通して, レジオネラ症には軽症例が存在することが明らかとなり, また, 軽症例では, マクロライドやテトラサイクリン系抗菌薬を使用しなくとも, 治癒する可能性が示唆された.

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