感染症学雑誌
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アルカリ処理-発色合成基質カイネティック法による血漿中 (1-3)-β-D-グルカン測定における非特異反応出現とその対策
吉田 耕一郎二木 芳人毛利 圭二宮下 修行小橋 吉博松島 敏春
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2004 年 78 巻 5 号 p. 435-441

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抄録

臨床検体を用いて, アルカリ処理-発色合成基質カイネティック法による血漿中 (1-3)-β-D-グルカン (β-グルカン) 測定における非特異反応の出現状況を調査し, その対策を考案した. 対象は2002年1月から3月の期間に川崎医科大学附属病院で血漿中β-グルカンが測定された患者232例の血漿584検体. β-グルカンの一種であるlaminaran oligosaccharidesをβ-グルカン測定系に添加することによりリムルス反応を抑制する系を用いてβ-グルカン値を測定した. この系による測定で算出された数値はβ-グルカン以外の妨害因子による非特異反応の結果と判定できる. また, 本法の反応タイムコースの吸光度変化率から独自に設定した非特異反応インデックスを用いて, 反応タイムコースが非特異反応の影響を受けているか否かの識別を試みた. 非特異反応は検討した156検体中, 81検体 (51.9%) に認められた. このうち過半数で非特異反応は9.9pg/mlの低値に留まっていた. 一方, 非特異反応インデックスについては, 非特異反応の有無を識別するカットオフ値を0.5と設定した場合, 感度88.9%, 特異度73.7%, 陽性適中率93.5%, 陰性適中率60.9%の成績が得られ有用であると考えられた. 非特異反応インデックスの使用により, アルカリ処理-発色合成基質カイネティック法の問題点であった非特異反応検出はおおよそ判別可能であり, 非特異反応に由来した偽陽性による不必要な抗真菌療法を回避できると思われる. しかし, 今後は本法の非特異反応検出の根本的問題解決に向け, さらに検討が行われなければならない.

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