感染症学雑誌
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1940年代に分離された日本の狂犬病ウイルス (高免株と小松川株) の系統樹解析
新井 陽子
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2004 年 78 巻 9 号 p. 815-822

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抄録
1940年代に分離された日本の狂犬病ウイルス株の中から高免株と, 小松川株の核タンパク (N) 遺伝子1,353全塩基の配列を決定した. 従来より研究されてきた日本の諸ウイルス株と世界で分離, 研究されてきたリッサウイルス 140株 (128株の遺伝子型1と12株の他の遺伝子型) の関係を知る目的で系統樹解析を行った. その結果狂犬病ウイルスは少なくとも12のクラスターに分けられた. 高免株および西ヶ原株は, ヨーロッパ, 中近東, アフリカからなる最も広い地域の分離株で形成されるクラスターに属した. さらに, これら2株は中国でヒトから分離された北京株由来の3aG (中国のワクチン株) と同じクラスターを形成した. 一方, 小松川株は北極, カナダ, ロシアから分離されたウイルスのクラスターに属し, 特にバイカル湖地域のsteppe fox, ハバロフスク地域のraccoon dogから分離されたウイルスと同じクラスターを形成した. これらの結果と史実から, 1940年代に分離された日本の狂犬病ウイルスは中国およびロシア由来のウイルスが伝播してきたと推測された.
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