感染症学雑誌
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国内で市販されていない海外渡航者用ワクチン (腸チフス及び髄膜炎菌ワクチン) への需要と接種希望者の検討
高山 直秀
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2005 年 79 巻 4 号 p. 254-259

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抄録

近年海外赴任などの目的で出国する日本人の数は増加している.多くが渡航先にしているアジア地域などでは, 日本では発生がないかまれな感染症が常在している.こうした疾患のうち, 腸チフスと髄膜炎菌感染症は, 有効なワクチンが実用化されて予防可能となっているが, 日本では未認可のため入手困難である.国内で腸チフスワクチンと髄膜炎菌ワクチンに対する需要がどの程度であるかを知るためにアベンティス・パストゥール社製の不活化腸チフスワクチンとA・C・Y・W135群4価多糖体髄膜炎菌ワクチンを個人輸入し, 倫理委員会の承認を得た後, 希望者を募って接種を行った.2003年5月6日から2004年9月末日までの接種希望者は腸チフスワクチンが124名, 髄膜炎菌ワクチンが35名であった.腸チフスワクチン希望者の年齢分布は30歳代前半が23名, 20歳代前半, 後半, 30歳代後半が各21名であり, 出国先はアフガニスタンが46名, インドが15名, タイが8名などであった.髄膜炎菌ワクチン希望者は, 19~24歳が10名, 25~29歳が8名, 30歳代が13名であり, 出国先は米国, ギニア, 英国がそれぞれ6, 5, 3名であった.また渡航予定のない医師8名, 看護師4名が接種を希望した.現在日本では, 上記ワクチンはほとんど知られていないが, 少数の医療機関においてでも接種されるようになれば, その存在が広く知られ, 需要も増大するものと予測される.

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