感染症学雑誌
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症由来A群レンサ球菌の薬剤感受性とパルスフィールドゲル電気泳動法による遺伝子型別
奥野 ルミ遠藤 美代子下島 優香子柳川 義勢諸角 聖大仲 賢二古畑 勝則福山 正文
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2005 年 79 巻 4 号 p. 260-269

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抄録

これまで, わが国における劇症型レンサ球菌感染症患者から分離されたStreptococcus pyogenesについてT型別および発熱性毒素などの諸因子の検査を実施し, 疫学的検討を行ってきた.今回は, 劇症型由来株の薬剤感受性試験を行うとともに, 劇症患者, 患者関係者由来株と劇症患者以外の患者由来株についてパルスフィールドゲル電気泳動 (Pulsed-field gel electrophoresis: PFGE) 法による遺伝子解析を実施した.また, 菌側の因子の宿主に及ぼす影響を探る目的で, 患者から分離された菌株のT型および発熱性毒素 (streptococcal pyrogenic exatoxin) 産生性と患者の各臨床症状との関連性を検討した.その結果, β-ラクタム系薬剤に対する耐性株はみられず, その他の複数の薬剤に対して耐性を示したものも1株のみであった.T1型株のPFGEパターンは2種のパターンを示したが, 劇症型患者とその関係者由来株は事例ごとにいずれかのパターンを示し, その偏りはみられなかった.T3型株はPFGEによりI~Vの5種に分類され, 最も多くの株がパターンIであり, 劇症型患者および非劇症型患者由来株が認められた.しかしパターンIIおよびIIIを示した株は非劇症型患者由来株のみであり, パターンIVおよびVは劇症型患者由来株のみであった.また, 分離株のT型と発熱性毒素産生性との組合せごとに, 発現した臨床症状との関連性を検討した結果, T1-SPEB産生型と播種性血管内血液凝固 (disseminated intravascularcoagulation: DIC), T3-SPEA産生型と咽頭炎等の間に相関がみられたが, その関係を明らかにするには今後さらに, 菌側の因子と宿主との関係を詳細に検討していく必要がある.

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