感染症学雑誌
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Vibrio cholerae O1の生物型とPCRを用いたゲノタイプの比較
横山 栄二小岩井 健司内村 眞佐子
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2005 年 79 巻 5 号 p. 307-313

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抄録

Vibrio cholerae O1の生物型別とPCRを用いたゲノタイプを, V. cholerae O1アジア型9株およびエルトール型81株を使用して比較した.
V. cholerae O1の生物型別に用いられる溶血性, 鶏赤血球凝集性, VP反応, ポリミシキンB感受性およびクラシック・ファージIV感受性について調べたところ, アジア型1株が鶏赤血球凝集反応で非定型的性状を示し, エルトール型18株がポリミキシンB感受性以外の生化学性状で非定型的性状を示した.
PCRを用いてhlyA, rtxAおよびrtxC保有状況を調べた結果, アジア型の全ての株がアジア型hlyAのみ保有し, エルトール型の全ての株がエルトール型hlyA, rtxAおよびrtxCを保有していた.一方tcpAの保有状況は, アジア型の全ての株がアジア型tcpAを保有していたが, ctxを保有しないエルトール型5株でエルトール型tcpA特有の増幅バンドが得られず, そのうち1株ではアジア型tcpA特有の増幅バンドが確認された.
以上のことから, V. cholerae O1の生物型はPCRを用いて検査したhlyA, rtxAおよびrtxCいずれかの保有状況に基づくゲノタイプと一致しており, 生化学性状の代用としてPCRを用いてゲノタイプを調べることで生物型別を行うことの有効性が確認されたが, エルトール生物型の起源を考え合わせると, hlyA保有状況により型別することが最も適切であると思われる.

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