2005 年 46 巻 3 号 p. 126-132
症例は57歳男性で, 主訴は下血. 平成14年6月注腸検査にてS状結腸癌と診断され, CT検査で肝S8/4, S4, S5に結節を認め, 肝細胞癌が疑われた. 血管造影下CTではS8/4にCTAPにて陰影欠損となり, CTHA早期で濃染, 後期で辺縁を残してwash outされる50mm大の結節を認め, 肝細胞癌と考えられた. また, S5にCTAPにて陰影欠損となり, CTHAの早期でring状に染まる10mm大の結節を認め, 肝転移が疑われた. 以上より肝細胞癌, S状結腸癌, およびその肝転移と診断し, 平成14年7月10日, S状結腸切除及び肝中央2区域切除術を施行した. S状結腸癌は中分化腺癌で, 肝S8/4の結節は肝細胞癌であったが, S5の結節は術前診断通り中分化腺癌でS状結腸癌の肝転移であった. 同時性に同一臓器に転移性および原発性の悪性腫瘍を重複し, さらに術前診断し得た症例はまれであり, 若干の文献的考察を加えて報告する.