欧米ではこの20年間に肝移植の適応疾患は大きく変化した. 現在はウイルス性肝硬変, アルコール性肝炎, 肝癌が主要な適応疾患となっており, C型肝炎における移植後再発, 肝癌の移植適応基準が問題となっている. 脳死肝移植先進国である米国では, 生体肝移植も絶対的なドナー不足の解決策の一つとして1997年頃より急速に普及し, 現在まで2,600例を越えるが, 現在はその実施につき見直しがされている. 我が国では2005年3月までに全国50超の施設で合計2,800例以上の生体肝移植が施行されている. 中でも成人症例が1999年以降急速に増加しており, 特に欧米同様, 肝癌, ウイルス性肝硬変症例が増加している. 成績は小児症例の方が成人症例より有意に良好であり, 胆汁鬱滞性疾患と代謝性疾患の予後が良好であった. ドナーの合併症は右葉グラフトで19%と多く, また約半数のドナーは何らかの症状が残っていると自覚しており, 約40%のドナーが将来に不安を感じている. 一方, 我が国では1997年の脳死法案制定後未だ28例の脳死肝移植しか施行されていない. すなわち脳死肝移植数が生体肝移植の1/100にも満たない. この現状は移植医療の本来あるべき姿とは言いがたく, さらなる脳死移植の普及, 即ち臓器提供を推進する活動が急務である.