肝臓
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症例報告
主腫瘍の存在診断が困難であった肉眼的門脈内腫瘍栓を伴う細小肝細胞癌の1例
太田 英夫永野 浩昭中村 将人和田 浩志野田 剛広丸橋 繁宮本 敦史武田 裕梅下 浩司堂野 恵三村上 卓道中村 仁信若狭 研一門田 守人
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2006 年 47 巻 3 号 p. 152-160

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抄録

主腫瘍の存在診断が困難であった肉眼的門脈内腫瘍栓を伴う細小肝細胞癌という稀な1例を経験した. 症例は60歳男性. 1991年, 1997年に肝細胞癌に対して2回肝切除を施行している. 以後4年間, 再発所見はなかったが, 2001年10月よりAFPの上昇と, 画像上P2枝に門脈内腫瘍栓を疑うthreads and streaks signを認めたが, 主腫瘍は描出されなかった. しかしながら肝細胞癌の再発を完全には否定し得ないため, 2002年3月5日S2亜区域切除術を施行した. 主腫瘍は径8mmのEdmondson III型の肝細胞癌でfc(+), fc-inf(+), vp1, vv0, b0, t2n0m0, stage IIであった. 本症例のように術前に主腫瘍を同定できず, 門脈内腫瘍栓のみ存在する症例は非常に稀であり, 門脈内血栓との鑑別のために種々の腫瘍マーカーや画像による総合的な診断が必要であると思われた. また細小肝癌症例の予後は極めて良好であるが, 腫瘍栓を合併した場合, その予後は不良である可能性も示唆される. しかし門脈内腫瘍栓がVp2より末梢にとどまる場合は, 積極的な治癒切除による長期生存例も存在し, 肝切除が予後延長に十分寄与すると思われた.

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© 2006 一般社団法人 日本肝臓学会
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