2007 年 48 巻 5 号 p. 240-245
症例は83歳男性.18年前に非機能性悪性膵島腫瘍に対して膵頭十二指腸切除術,15年前に残胃癌に対する残胃全摘を施行した.4年前から糖尿病に対するインスリン治療を開始し,その後しばしば低血糖発作を発症していた.血糖コントロールのため近医に入院の際,CTで肝左葉外側区背側に40×25mmの腫瘤を認め,精査目的に当科に紹介となった.肝腫瘤はdynamic CTにて動脈相,門脈相ともに周囲肝よりも造影効果に乏しく,superparamagnetic iron oxide(SPIO)-MRIにて腫瘤部におけるSPIOの取り込みは周囲肝と同等であった.エコーガイド下吸引針生検では脂肪沈着を認めるのみで悪性細胞は認められず,限局性脂肪肝と診断した.MRIでは方形葉背側にも脂肪化を認め,その局在の特徴から,胃・十二指腸からの異所性静脈還流および上腹部の手術が限局性に脂肪沈着を引き起こした原因と考えられた.