肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
症例報告
転移性肝癌と鑑別を要した膵頭十二指腸切除術および残胃全摘後の限局性脂肪肝の1例
野坂 加苗植木 賢孝田 雅彦藤井 容子有本 一仁應儀 長子村脇 義和
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 48 巻 5 号 p. 240-245

詳細
抄録

症例は83歳男性.18年前に非機能性悪性膵島腫瘍に対して膵頭十二指腸切除術,15年前に残胃癌に対する残胃全摘を施行した.4年前から糖尿病に対するインスリン治療を開始し,その後しばしば低血糖発作を発症していた.血糖コントロールのため近医に入院の際,CTで肝左葉外側区背側に40×25mmの腫瘤を認め,精査目的に当科に紹介となった.肝腫瘤はdynamic CTにて動脈相,門脈相ともに周囲肝よりも造影効果に乏しく,superparamagnetic iron oxide(SPIO)-MRIにて腫瘤部におけるSPIOの取り込みは周囲肝と同等であった.エコーガイド下吸引針生検では脂肪沈着を認めるのみで悪性細胞は認められず,限局性脂肪肝と診断した.MRIでは方形葉背側にも脂肪化を認め,その局在の特徴から,胃・十二指腸からの異所性静脈還流および上腹部の手術が限局性に脂肪沈着を引き起こした原因と考えられた.

著者関連情報
© 2007 一般社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top