2009 年 50 巻 11 号 p. 618-625
2008年にInternational Autoimmune Hepatitis Group(IAIHG)から,新たな自己免疫性肝炎(AIH)簡易版スコアリングシステム(新基準)が提唱された.今回,当科でのAIH症例について新基準を用いて再評価し,現基準と比較しその有用性について検討した.対象は,1965年12月から2008年7月まで当科で肝生検を施行されたAIH 59例とした.方法は,2つの診断基準を用いて疑診,確診,基準外に分類し,現基準から新基準へのスコアの推移や他疾患における新基準でのスコアの比較を行った.その結果,新基準では確診例が37.3%から74.6%へ増加した.一方,新基準で基準外となった症例も6例増加したが,IgG低値と肝炎ウイルス陽性がその要因であった.なお,他疾患において新基準で確診となる症例は認めなかったが,原発性胆汁性肝硬変(PBC)例では32.6%(31/95例)が疑診となった.以上のことから,新基準はAIHの診断において簡便で有用なシステムと考えられたが,AIHの最終診断においては個々の臨床的特徴を踏まえ総合的に判断する必要がある.