2009 年 50 巻 12 号 p. 711-718
症例は66歳女性.全身倦怠感を主訴に近医を受診し,急性B型肝炎重症型と診断され当院に紹介入院となった.第2病日目には脳症II度となり,劇症肝炎急性型と診断した.人工肝補助,抗ウイルス療法やステロイドパルス療法などの集中治療が奏効し肝炎は改善した.しかし,淡い多発性の斑状陰影が両肺にみられ,右腎の腫瘤像も増大するため,腎腫瘤をドレナージ目的で穿刺したところ,アスペルギルスが検出され,侵襲性肺アスペルギルス症(invasive pulmonary aspergillosis:IPA)と診断し,その後から発熱が続き,翌日には自然気胸と脳出血が同時に発生した.一時,回復傾向がみられたが,致命的な両側脳室に穿破するクモ膜下出血が起こり,第75病日に死亡した.アスペルギルスは免疫力が衰えた患者では致命的なIPAを起しうるが,検出の困難な場合が多く,抗真菌治療を行なっても予後不良であるとされており,ハイリスク患者では予防的抗真菌治療が勧められる.