2009 年 50 巻 2 号 p. 84-89
症例は46歳,男性.2006年12月に検診の腹部超音波検査にて,肝S6に径20 mmの低エコー腫瘤を指摘されるも経過観察となっていた.2007年12月の腹部超音波にて腫瘍は全体に低エコーを呈し,腫瘍径が36 mmに増大していたため,当院に紹介となった.血液生化学検査では肝機能,腫瘍マーカーに異常はみられず,肝炎ウイルスマーカーも陰性であった.腹部造影CT, MRI等の精査を行い,それら画像的所見と増大している経過から肝細胞癌と術前診断し,肝後区域切除術を施行した.術後病理学的検査にて肝血管筋脂肪腫と診断された.肝血管筋脂肪腫は,血流豊富な性質から,しばしば肝細胞癌と鑑別に難渋する.特に本症例は,脂肪成分に乏しかったため超音波にて全体に低エコーを呈し,経過中に腫瘍の増大をみた極めて稀な例であり,より肝細胞癌との鑑別が困難であった.