抄録
症例は68歳の男性.画像所見,AFP・PIVKA IIの上昇より原発性肝癌ならびに多発肺転移と診断された.最大径8 cmの原発性肝癌に対し,連続した4回の肝動脈化学塞栓療法・肝動脈化学療法を施行した.治療後に原発性肝癌ならびに肺転移巣が消失し,同時にAFPとPIVKA IIの値も23,350 ng/ml, 45,700 mAU/mlがそれぞれ4 ng/ml, 21 mAU/mlへと正常化した.肺転移巣の消失機序の確定は困難であったが,原発性肝癌に対する腫瘍壊死変化を介した腫瘍免疫の賦活化,自然退縮などが推察された.