肝臓
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症例報告
超音波ドプラ法にて動脈血流陰性・門脈血流増加を呈したB型劇症肝炎の1例:Necropsyによる門脈域の動脈と門脈の組織学的検討
杤尾 人司今井 幸弘白根 博文木本 直哉岡田 明彦河南 智晴猪熊 哲朗
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2009 年 50 巻 8 号 p. 437-444

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抄録

我々は,超音波ドプラ法にて肝動脈血流が検出されず,逆に門脈血流速度が46.3 cm/sと異常な増加所見を呈しながら,入院後わずか9日間で不幸な転帰をたどられた54才男性のB型劇症肝炎の一例を経験した.Necropsyにより得られた肝組織の病理組織学的な所見では,肝実質ではほとんどの肝細胞が変性ないし壊死しており,肝実質,門脈域の両者に,リンパ球を主体とする炎症細胞の浸潤が瀰漫性に認められた.門脈域に認められた血管腔に血栓等の閉塞所見はなかった.門脈域(n=20)に認められた動脈血管本数は,1.6±0.9(0∼4)本であり,また,門脈血管径に対する動脈血管径の比率は,0.18±0.20(0.03∼0.72)であった.これらは,既報と比べると動脈血管数が少なく,内腔が狭小化していると考えられる所見であった.組織学的に確認された動脈血管数の減少,動脈血管径の狭小化という組織像は,ドプラ法で捉えられた動脈血流陰性・門脈血流増加という特異な血流動態を反映していると考えられた.

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© 2009 一般社団法人 日本肝臓学会
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