肝臓
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症例報告
ステロイドパルス療法直後に単純ヘルペスウイルス肝炎を発症し,一過性に血中B型肝炎ウイルスDNAの陽性化を認めたB型肝炎ウイルス既往感染者の1例
宮川 恒一郎柴田 道彦久米井 伸介松橋 亨日浦 政明阿部 慎太郎原田 大
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2014 年 55 巻 1 号 p. 51-56

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抄録

症例は55歳女性.HBV既往感染者であることを確認後,バセドウ病眼症に対してステロイドパルス療法を第1-3病日,第8-10病日に施行した.第18病日より38℃台の発熱と胸腹部の小丘疹が出現し,第19病日に肝障害を認めたが,HBV-DNAは検出感度以下であった.第20病日に当科に紹介入院となり,血中HBV-DNAは2.8 log copies/mLと陽性化を認めた.肝障害出現時のHBV-DNAが検出感度以下であったこと,入院時のウイルス量が低値であったことから,HBVが急性肝障害の原因とは考え難く,精査により単純ヘルペスウイルス(HSV)による肝炎と診断した.その後HSV肝炎の改善とともに血中HBV-DNAは速やかに陰性化した.本症例の血中HBV-DNA再陽性化は,ステロイド投与により肝細胞内で増殖したHBV-DNAが,HSV肝炎による肝細胞破壊により血中に逸脱したものである可能性が示唆された.ステロイド単剤によりHBV既往感染者でも再活性化が起こり,他の原因による肝障害により血中HBV-DNAが再陽性化することを捉えた興味深い1例と考え報告する.

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© 2014 一般社団法人 日本肝臓学会
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