2014 年 55 巻 11 号 p. 690-697
症例は57歳女性.検診で肝腫瘤を指摘された.腹部CT,MRIで血管腫と診断したが,増大傾向を認めたため入院した.肝胆道系酵素,腫瘍マーカーの上昇は認めず,肝炎ウイルスは陰性であった.腫瘤はUSで不均一な低輝度,単純CTで低吸収,造影CTにて辺縁優位に濃染,MRIではT1強調像で低信号,T2強調像で内部に不均一な低信号を伴う高信号,肝細胞相では低信号となった.Single-level dynamic CT Angiography(CTA)ではリング状濃染を認め,造影効果は持続した.腫瘍内部は早期から濃染され速やかに消褪し,後期相では低吸収となった.診断に難渋したため肝腫瘍生検を施行した.その結果,免疫組織化学的にNCAM,chromogranin A,synaptophysinは陽性であり神経内分泌腫瘍と診断した.上部,下部消化管内視鏡検査,PET-CTも施行したが肝以外に異常所見を認めず,肝原発神経内分泌腫瘍と診断し,外科的切除を施行した.肝原発の神経内分泌腫瘍は非常にまれな疾患であるが,詳細な画像検査を施行し,若干の文献的考察を加え報告する.