2014 年 55 巻 12 号 p. 731-739
症例は24歳女性.肝炎ウイルスマーカーは陰性,経口避妊薬,ステロイド使用歴ともになし.発熱と心窩部痛を主訴に近医受診し,肝外側区に直径10 cmの腫瘍を指摘された.腫瘍内出血を伴う多血性腫瘍であり,生検では悪性が否定できないこと,疼痛が持続することから腹腔鏡下左肝切除が施行された.摘出標本は被膜をもたず,内部に出血巣を認め,軽度の細胞密度上昇を伴う異型性の乏しい細胞により構成されていた.周囲肝に比べliver fatty acid binding protein(L-FABP)の発現低下を認め,hepatocyte nuclear factor 1α-inactivated type(HNF1α-inactivated type)の肝細胞腺腫と診断された.近年,肝細胞腺腫は分子病理学的に分類され,それに準じて治療方針が考慮される.本症例は生検で診断がつかず手術を施行したが,最終的には免疫組織学的検討が診断には重要であった.