2014 年 55 巻 12 号 p. 740-748
症例は62歳男性.5年にわたるB型肝炎ウイルス関連肝細胞癌に対する繰り返す肝動脈塞栓術(TACE)の経過中,多発するリンパ節および骨転移を認めたためソラフェニブを導入したが,まもなく食欲不振,全身倦怠感が出現,内服中止後も改善がみられず入院となった.入院時身体所見として出血傾向を伴い,血液検査では血小板数低下,FDP 276 μg/mlまでの上昇など播種性血管内凝固症候群の徴候がみられ,末梢血への芽球の出現やLDH上昇も認めた.骨シンチグラフィでは異常集積を認めなかったが,MRIで椎体骨に複数病変を認めていることより骨髄癌症を疑い,骨髄吸引穿刺を行い播種性骨髄癌症と診断した.診断3日後に全身状態の悪化にて永眠された.早期診断と集学的治療の成果により担癌状態での長期生存例が増加している肝細胞癌でも,まれとはいえ予後不良である骨髄癌症併発の可能性を認識しその対処法を探索する必要があると考えられた.