肝臓
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原著
敗血症性肝障害例における早期予後予測因子の検討
松本 光太郎菊池 健太郎守時 由起茂木 千代子山田 はな恵綱島 弘道小澤 範高馬淵 正敏梶山 祐介土井 晋平宮川 浩安田 一朗
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キーワード: 敗血症性肝障害, DIC, ALP, γ-GTP, MRSA
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2015 年 56 巻 5 号 p. 179-185

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抄録

当院における敗血症性肝障害の臨床的特徴をretrospectiveに調査し,発症早期に予後予測に役立つ因子を検討した.過去1年間の敗血症116例中,敗血症性肝障害を61例(52.6%)に認めた.敗血症性肝障害を合併した例は非合併例に比べて死亡率が有意に高かった.敗血症性肝障害合併例は非合併例と比較してDICの併発例が多く,DIC非併発例でも血清FDP, D-dimer値が高値であることから,敗血症性肝障害の発生にDICが関与していると考えられた.またDICを併発した敗血症性肝障害における死亡例と生存例の比較では死亡例で血清ALPが有意に高値であり,γ-GTPも死亡率に影響を与える可能性があった.敗血症性肝障害例において総ビリルビン値の推移を生存例と死亡例で比較したところ,死亡例で有意に総ビリルビン値の上昇を認め,経過中に黄疸を呈し死亡した例は10例であった.また死亡した10例中,3例からMRSAが検出されており,菌種別の死亡率ではMRSAが最も高かった.予後予測因子について多変量解析(ロジスティック回帰分析)で検討した結果,敗血症性肝障害発生時においてはALP高値が唯一の予後予測因子であった.以上から敗血症性肝障害の発症時に血清ALP, γ-GTPが高値であること,またMRSAが検出されることは,早期の予後予測マーカーになる可能性があると考えられた.

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© 2015 一般社団法人 日本肝臓学会
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