症例は47歳女性.2012年6月,人間ドックで肝機能異常を指摘され前医を受診した.肝内に多発する腫瘍性病変を指摘され,同7月に当科を紹介受診した.肝炎ウイルスマーカーは陰性で,各腫瘍マーカーは正常範囲内であった.画像検査では確定診断に至らず,肝腫瘍生検を行った.多発肝血管肉腫と確定診断され,同8月よりパクリタキセルによる化学療法を開始した.初回投与後,好中球減少が見られたため,投与量の減量を行い投与間隔をあけながら,G-CSF製剤を併用して治療を継続した.化学療法開始後はSDで経過していたが,腫瘍の増大に加えてT-Bilの増加,全身倦怠感の増強があり2013年8月に化学療法を休止した.その後は在宅緩和ケアへ移行し,同12月に永眠された.肝血管肉腫の平均予後は診断から6カ月とされ,有効な治療法はほとんどない.少量のパクリタキセルで治療を行い比較的長期のコントロールができた肝血管肉腫の一例を経験したので報告する.