2017 年 58 巻 11 号 p. 626-631
症例は44歳,同性愛者の男性.発熱および粘血便を主訴に受診.下部消化管内視鏡所見および血清抗体価よりアメーバ性大腸炎と診断した.同時点では肝胆道系酵素異常はなく,HBs抗原は陰性であった.アメーバ性大腸炎に対する加療後の経過観察期間中に全身倦怠感に伴うHBs抗原の陽転化ならびに肝胆道系酵素異常が出現した.IgM-HBc抗体が高力価陽性でありB型急性肝炎と診断した.HBV genotypeはAであった.以後ALT 1565 U/L,T.Bil 17.2 mg/dlを最大値に肝炎は沈静化し,HBs抗原から抗体へのセロコンバージョンを認めた.アメーバ性大腸炎治療後の経過観察中に続発したため,発症を捉えることが可能であったB型急性肝炎の1例を経験した.性感染症においては,重複感染を考慮し,潜伏期間を念頭に置いた慎重な経過観察および全身検索が必要である.