2017 年 58 巻 4 号 p. 228-232
本邦の高齢化は明らかであり,高齢者における肝細胞癌に対する治療機会は増加している.今回,我々は89歳で肝細胞癌を初発し,5回の治療反復により,10年間の経過観察し得た象徴的な症例を経験した.2007年(89歳時)に肝S4に対してラジオ波熱凝固(RFA)を施行した.2010年(93歳時)にS1を肝動脈化学塞栓術(TACE),2011年(94歳時)にS3をRFA,2014年(97歳時)にS6をTACE施行した.99歳の今回は,PIVKA-IIの再上昇を認め,造影CTでS3,S6にそれぞれ長径13,15 mm大の肝細胞癌を認めた.TACEを行い,過去の治療部の再発所見は認めなかった.今回も順調に退院できた.長期にわたって経過良好であった要因として,肝予備能が良好であったこと,根治治療を反復できたこと,99歳という高齢ながらもPS1と良好で治療意欲が高く認知機能も良好であったこと,などが考えられた.