肝臓
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症例報告
十全大補湯により抗腫瘍効果を認めた肝細胞癌・多発肺転移の1例
廣瀬 雄紀木下 晃吉木下 勇次石本 詩子柴田 恵子山口 るり赤須 貴文三浦 由紀子横田 健晴今井 那美岩久 章木島 洋征小池 和彦猿田 雅之
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2018 年 59 巻 7 号 p. 355-362

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抄録

症例は84歳の男性.C型肝硬変で当科へ通院中.肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;HCC)に対して,局所治療や血管内治療を繰り返していた.肝内に多発再発を認めたが,腎機能障害のため血管内治療は継続困難となった.テガフール・ウラシル配合剤投与を行うも腫瘍マーカーは上昇傾向であり,投与を中止した.その後HCCは経時的に増加・増大し,多発肺転移も認めた.免疫賦活作用を期待して十全大補湯を開始したところ,開始1カ月後に腫瘍マーカーは著明に低下し,開始6カ月後には一部の肝内病変は縮小し多発肺転移は消失した.

十全大補湯による抗腫瘍効果と考えられ,推奨された治療に対して抵抗性,または肝機能不良の進行HCC症例に対して,1つの選択肢となり得る可能性が示唆された.

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© 2018 一般社団法人 日本肝臓学会
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