症例は49歳男性.アルコール性非代償性肝硬変で肝移植も考慮しつつ経過観察中,38℃台の発熱と臀部から下肢にかけての疼痛を認め救急外来受診.疼痛の増悪により歩行困難となり,発熱も持続するため入院した.造影CTにて左腸腰筋に4.5 cm大の辺縁造影効果を有す低吸収域を認め腸腰筋膿瘍と診断.メロペネム投与を開始した.炎症反応と症状は軽快したため抗菌薬一旦終了としたが,下肢痛増悪,歩行困難・発熱が再燃した.膿瘍穿刺ドレナージの適応を検討したが膿瘍は比較的小さく深部にあり,また肝予備能不良であり出血,肝不全の危険性が高いと判断しメロペネムに高気圧酸素(hyperbaric oxygen,HBO)療法を併用する方針とした.HBO開始後数日で解熱,下肢痛も著明に改善し歩行可能となり退院した.以後,症状の再燃はなく,肝機能の悪化も認めなかった.CT上膿瘍の消失を確認し,腸腰筋膿瘍は治癒したものと考えられた.