肝臓
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症例報告
E型肝炎既感染例に発症した輸血後E型肝炎の1例
髙岡 良成森本 直樹三浦 光一野本 弘章渡邊 俊司津久井 舞未子前田 浩史五家 里栄礒田 憲夫室井 一男山本 博徳
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2020 年 61 巻 1 号 p. 11-17

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抄録

症例は74歳男性.2018年X月に大動脈弁置換術の際に輸血を施行した.術後2カ月頃から肝機能障害を認め,HEV-IgA抗体およびHEV-RNA陽性(genotype 3b)でE型肝炎と診断した.その後の解析で輸血前のHEV-IgG抗体陽性,HEV-RNA陰性であったことからE型肝炎既感染例と考えられた.また輸血に使用した凍結新鮮血漿からHEV-RNAが検出され,解析できた遺伝子配列が患者由来HEVとほぼ一致したため,輸血によるE型肝炎と判断した.本邦では2017年までに本例を含めると,少なくとも26例の輸血後E型肝炎が発症し,その報告数は増加しつつある.北海道地区では輸血製剤において核酸増幅検査によるHEVスクリーニング検査が行われているが,それ以外の地区では施行されていない.よって全国での核酸増幅検査によるHEVスクリーニングの早期導入が望まれる.

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© 2020 一般社団法人 日本肝臓学会
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