2020 年 61 巻 6 号 p. 314-325
大規模診療データベースを用いて,肝硬変入院患者を対象に本邦での腹水の合併頻度および腹水合併時の利尿薬治療の実態を調査した.2011年から2018年に肝硬変で入院した67,698名の患者中,50.9%で腹水を合併し,アルコール性肝硬変での合併が高かった(60.1%).スピロノラクトンとフロセミドの併用は,2013年から2018年で減少する一方,両薬剤に,トルバプタンが併用される機会は増加する傾向であった.また,トルバプタンはより重症な患者に処方されており,トルバプタン併用時のフロセミドの処方用量は,2013年以降,≤20 mgで経時的に増加したが,>40 mgでは減少した.本研究の結果,約半数の肝硬変入院患者で腹水を合併し,中でもアルコール性肝硬変に多いため,改めて禁酒・減酒の啓発が重要であることが示唆された.また,本邦で推奨される利尿薬選定に沿った腹水治療の実態であることが明らかになった.