2021 年 62 巻 10 号 p. 630-638
63歳女性,食欲不振を主訴に当科紹介受診した.精査の結果,食道原発悪性黒色腫・胃浸潤・リンパ節転移の診断で外科的に切除され,術後化学療法としてnivolumabを投与された.初回投与から2週間で高度な肝障害を発症し,入院した.ウイルス性肝炎や他の肝胆道系疾患を疑う所見はなく,肝生検から免疫関連有害事象による肝障害と診断した.中等量のprednisolone(PSL)内服(0.8 mg/kg)では治療効果が乏しく,第15病日にステロイドパルス療法(SPT:steroid pulse therapy)を行い,第25病日に肝酵素は低下に転じた.凝固機能も低下したが(PT%最低値:44%),経過中に顕性黄疸の出現はなく,肝不全には至らずに回復した.免疫関連肝障害は,病態が解明されておらず,治療法も確立されていない.本例のような重篤な肝障害に進行した症例には,SPTも選択肢になり得ると考える.