症例は22歳男性.難治性てんかんにて幼少期から小児科を通院し,複数の抗てんかん薬を服用していた.てんかん発作のため入院中であったが,下痢の精査で行った腹部CTで肝S6に腫瘤を指摘され当科を受診し,約2 cmの多血性肝腫瘍を認め,画像検査および肝腫瘍生検の結果から肝細胞腺腫(HCA)や高分化型肝細胞癌が疑われた.腫瘍の増大傾向を認めたため腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.肉眼的には被膜のない黄白色調の充実性腫瘍であった.病理組織学的には異型性の乏しい肝細胞が索状に増生し,類洞の拡張,壁の肥厚した異常血管を認めた.免疫組織染色にてserum amyloid AおよびC-reactive protein陽性であったことから炎症性HCAと診断した.本症例は,抗てんかん薬によって生じた性ホルモン異常がHCAの発症に関与していることを示唆する貴重な症例であり,若干の文献的考察とともに報告する.