肝臓
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症例報告
抗てんかん薬長期服用中の若年男性に生じた炎症性肝細胞腺腫の1切除例
永原 天和池田 傑星野 由樹松木 由佳子三好 謙一的野 智光杉原 誉明大山 賢治岡野 淳一磯本 一杉谷 雅彦
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2021 年 62 巻 7 号 p. 420-428

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抄録

症例は22歳男性.難治性てんかんにて幼少期から小児科を通院し,複数の抗てんかん薬を服用していた.てんかん発作のため入院中であったが,下痢の精査で行った腹部CTで肝S6に腫瘤を指摘され当科を受診し,約2 cmの多血性肝腫瘍を認め,画像検査および肝腫瘍生検の結果から肝細胞腺腫(HCA)や高分化型肝細胞癌が疑われた.腫瘍の増大傾向を認めたため腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.肉眼的には被膜のない黄白色調の充実性腫瘍であった.病理組織学的には異型性の乏しい肝細胞が索状に増生し,類洞の拡張,壁の肥厚した異常血管を認めた.免疫組織染色にてserum amyloid AおよびC-reactive protein陽性であったことから炎症性HCAと診断した.本症例は,抗てんかん薬によって生じた性ホルモン異常がHCAの発症に関与していることを示唆する貴重な症例であり,若干の文献的考察とともに報告する.

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© 2021 一般社団法人 日本肝臓学会
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