2021 年 62 巻 9 号 p. 548-554
症例は78歳女性.C型肝硬変を背景とする腫瘍径35 mmと16 mmの2個の肝細胞癌(HCC)の結節に対して,Emprintアブレーションシステムにて出力100 W,計29分間のマイクロ波焼灼療法(MWA)を施行した.翌日のCTでは,腫瘍を含む広い焼灼範囲が得られていた.術後2日目,胸部症状の訴えがあり,十二誘導心電図においてV1-4でのT波の陰転化をみとめた.冠動脈造影検査では冠動脈に有意狭窄はなく,たこつぼ型心筋症と診断された.心不全に対してフロセミドによる心負荷軽減を行い,術後10日目に退院となった.たこつぼ型心筋症は,外科的手術など過剰な身体的ストレスも発症の一因となることが知られている.MWAは広い焼灼範囲が得られる優れたHCCの局所治療であるが,症例によっては身体的ストレスも大きいものと考えられ,たこつぼ型心筋症も合併症の一つとして念頭に置く必要がある.