肝臓
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症例報告
肝細胞癌に対するマイクロ波焼灼療法術後にたこつぼ型心筋症を発症した1例
岩永 光巨千葉 哲博黒杉 茜宇野澤 秀美佐久間 崇文藤田 尚人金山 健剛神崎 洋彰興梠 慧輔小林 和史清野 宗一郎中川 良叶川 直哉中村 昌人近藤 孝行齊藤 朋子日下部 裕子小笠原 定久鈴木英 一郎中本 晋吾太和田 暁之室山 良介加藤 順神田 達郎丸山 紀史加藤 直也
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2021 年 62 巻 9 号 p. 548-554

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抄録

症例は78歳女性.C型肝硬変を背景とする腫瘍径35 mmと16 mmの2個の肝細胞癌(HCC)の結節に対して,Emprintアブレーションシステムにて出力100 W,計29分間のマイクロ波焼灼療法(MWA)を施行した.翌日のCTでは,腫瘍を含む広い焼灼範囲が得られていた.術後2日目,胸部症状の訴えがあり,十二誘導心電図においてV1-4でのT波の陰転化をみとめた.冠動脈造影検査では冠動脈に有意狭窄はなく,たこつぼ型心筋症と診断された.心不全に対してフロセミドによる心負荷軽減を行い,術後10日目に退院となった.たこつぼ型心筋症は,外科的手術など過剰な身体的ストレスも発症の一因となることが知られている.MWAは広い焼灼範囲が得られる優れたHCCの局所治療であるが,症例によっては身体的ストレスも大きいものと考えられ,たこつぼ型心筋症も合併症の一つとして念頭に置く必要がある.

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© 2021 一般社団法人 日本肝臓学会
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