肝臓
Online ISSN : 1881-3593
Print ISSN : 0451-4203
ISSN-L : 0451-4203
原著
オキサリプラチンによる肝類洞閉塞症候群―臨床像と病理像の対比―
長濱 俊介上野 真行寺田 和弘萱原 隆久髙畠 弘行守本 洋一水野 元夫
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 63 巻 8 号 p. 372-380

詳細
抄録

オキサリプラチンは胃癌や大腸癌,膵癌に対して頻用される抗癌剤であるが,副作用として類洞閉塞症候群(SOS)がしばしば問題となる.SOSの確定診断には肝生検が必要とされているが,オキサリプラチンによるSOSについて,臨床像と病理所見の関連を検討した報告は少ない.今回,当院でオキサリプラチンを投与後に肝組織を評価し得た88例を対象に,臨床所見と病理所見を検討した.臨床的に門脈圧亢進症を認めたのは8例(9.1%)であり,内訳としては脾腫が最多で,全例血小板減少を伴っていた.このうち,病理学的にSOSの所見を認めたのは2例(25%)のみで,臨床像と病理像がしばしば乖離することが明らかとなった.以上から,臨床的にSOSが強く疑われる症例では肝組織検査による診断に拘泥することなく,脾臓サイズや血小板数の経時的な変化を根拠とした臨床的診断も考慮すべきである.

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本肝臓学会
前の記事 次の記事
feedback
Top