肝臓
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症例報告
Fontan術後に発症した切除不能肝細胞癌の1例
萩原 智上嶋 一臣西田 直生志依田 広三長 孝輔南 康範田北 雅弘青木 智子盛田 真弘千品 寛和松原 卓哉大丸 直哉稲村 昇工藤 正俊
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キーワード: Fontan, HCC, サーベイランス, FALD, FIB-4
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2023 年 64 巻 11 号 p. 567-574

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抄録

症例は30代男性.幼少期に完全大血管転位III型に対してFontan手術が施行され,近医に定期的に通院していた.20XX年7月腹部USで多発肝腫瘤を指摘され当院紹介受診となった.造影CTにて最大13 cmの多発肝細胞癌と判明した(BCLC stage B).画像上は門脈圧亢進所見や明らかな肝形態異常を認めなかったが,肝生検でCongestive Hepatic Fibrosis Score 3であり,実際には線維化の進展を認めていた.肝内多発のため外科手術やRFAの適応外であった.また最大径の腫瘍は肝外に突出しており,腹腔内破裂の危険性もあることから,まずTACEを施行した.再発に応じて各種抗癌剤治療を行い,生存中である.画像上は肝線維化を示唆する所見はなかったが,Fontan術後の特殊な循環動態では,肝線維化が進展している可能性があり,本症例を通して肝癌サーベイランスの重要性を再考する.

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© 2023 一般社団法人 日本肝臓学会
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