肝臓
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症例報告
肝動脈虚血による急性肝障害を契機に発見された肝動脈瘤破裂合併ANCA関連血管炎の1例
倉橋 知英法水 淳三宅 崇之早田 菜保子岡本 明之青地 一樹平尾 元宏山田 拓哉平松 直樹
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キーワード: 肝動脈瘤, ANCA関連血管炎
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2023 年 64 巻 9 号 p. 437-444

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抄録

症例は80代男性.発熱・咳嗽を主訴に前医を受診,肺炎と診断され抗菌薬投与を開始されたが,肝酵素上昇を認め紹介となった.血液検査でMPO-ANCA陽性であった.腹部エコー検査で肝動脈内血栓を認め,肝動脈虚血による急性肝障害と診断した.第7病日に収縮期血圧70 mmHg台と急激な低下を認め,造影CTで肝周囲に血腫,多発肝動脈瘤,右肝動脈瘤周囲の高吸収域の出現から,肝動脈瘤破裂による腹腔内出血と診断した.腹部血管造影で明らかな出血源は同定できず経過観察とした.第30病日,喀血と呼吸状態の増悪があり,胸部CTで肺胞出血によるびまん性のすりガラス影を認め,ANCA関連血管炎(AAV)と診断した.ステロイドパルス療法にて症状は改善し,肝動脈瘤及び肺胞からの出血の再発なく退院となった.AAVは主に小血管を障害するが,肝動脈等の中型血管も障害をおこすことがあり,稀に肝動脈瘤の原因となりうるため注意を要すると考えられた.

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© 2023 一般社団法人 日本肝臓学会
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