肝臓
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64 巻, 9 号
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症例報告
  • 古山 準一, 高木 秀雄, 森園 竜太郎, 水尾 仁志, 岡本 宏明
    2023 年 64 巻 9 号 p. 430-436
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/11
    ジャーナル フリー

    60歳台,男性.X-12日から全身掻痒感を自覚.X-10日 某皮膚科受診しエピナスチン塩酸塩,ジフルコルトロン吉草酸クリームを処方された.X-8日 前医内科受診しAST 217 U/L,ALT 400 U/Lと肝機能異常を認め,IgA-HEV抗体(-)だった.X-1日 同院再診し肝障害の増悪を認め,X日 当科入院.IgA-HEV抗体は入院時未施行でX+7日に施行したIgA-HEV抗体が(+)と判明した.保存血清による精査の結果,IgG,IgM,IgA-HEV抗体およびHEV-RNAは,各々,X-8日(-),(-),(-),(+:subgenotype 4c)であり,X+2日(+),(+),(+),(+)であった.発症早期ではIgA-HEV抗体が陰性となることが稀にあり他の原因が否定的で肉などの喫食状況によってはIgA-HEV抗体の再検,HEV-RNAの検査を施行すべきであると考えられた.

  • 倉橋 知英, 法水 淳, 三宅 崇之, 早田 菜保子, 岡本 明之, 青地 一樹, 平尾 元宏, 山田 拓哉, 平松 直樹
    2023 年 64 巻 9 号 p. 437-444
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/11
    ジャーナル フリー

    症例は80代男性.発熱・咳嗽を主訴に前医を受診,肺炎と診断され抗菌薬投与を開始されたが,肝酵素上昇を認め紹介となった.血液検査でMPO-ANCA陽性であった.腹部エコー検査で肝動脈内血栓を認め,肝動脈虚血による急性肝障害と診断した.第7病日に収縮期血圧70 mmHg台と急激な低下を認め,造影CTで肝周囲に血腫,多発肝動脈瘤,右肝動脈瘤周囲の高吸収域の出現から,肝動脈瘤破裂による腹腔内出血と診断した.腹部血管造影で明らかな出血源は同定できず経過観察とした.第30病日,喀血と呼吸状態の増悪があり,胸部CTで肺胞出血によるびまん性のすりガラス影を認め,ANCA関連血管炎(AAV)と診断した.ステロイドパルス療法にて症状は改善し,肝動脈瘤及び肺胞からの出血の再発なく退院となった.AAVは主に小血管を障害するが,肝動脈等の中型血管も障害をおこすことがあり,稀に肝動脈瘤の原因となりうるため注意を要すると考えられた.

  • 山本 英里子, 村田 美樹, 山敷 宣代, 山科 雅央, 諏訪 兼彦, 露無 景子, 吉矢 和久, 中森 靖, 島谷 昌明, 関 寿人, 長 ...
    2023 年 64 巻 9 号 p. 445-451
    発行日: 2023/09/01
    公開日: 2023/09/11
    ジャーナル フリー

    症例は神経脱髄性疾患に対し加療中の10代後半女性.2週間前より薬疹を認め,被疑薬中止により改善した.1週間前より発熱,嘔気嘔吐が出現,AST 1708 U/L,ALT 1238 U/L,T-Bil 3.5 mg/dlと肝酵素著増を認め,急性肝炎の診断で入院となった.血清学的検査ではウイルス性は否定的であり,薬物性肝障害を念頭に,服用中のステロイドとアザチオプリンを継続した.入院第8病日,PT-INR 2.32,肝性脳症II度を認め,急性肝不全昏睡型(ALF)と診断,ステロイドパルス,血漿交換,高流量持続血液濾過透析と肝移植適応評価を開始したが脳症の改善なく,第10病日に脳浮腫を来した.後に血清中EBV-DNA陽性(3.3 LogIU/mL)が判明した.EBVは成人ALFの成因の約1%と稀だが予後は厳しく,成因不明ALFではEBV再活性化の関与も念頭に置く必要性が示唆された.

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